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リハビリテーション科

運動器のリハビリテーションについて

運動器とは、骨や関節、筋肉、神経などの身体活動に不可欠な器官の総称です。運動器のリハビリテーション治療は、機能が低下している筋力の改善や関節の可動域を広げ、立ち上がり・歩行・階段の昇降などの日常動作の改善、社会活動への復帰、高度な運動を行うスポーツ活動への復帰を目標に実施します。治療対象は急性期の痛みから、慢性疼痛、スポーツ障害など幅広く、個々の患者様の状態に併せて専門的なアプローチにて行います。
手術が必要なケースでは、手術前に状態の評価と治療効果の予測を実施し、手術後にできる限り早く機能が回復するようにサポートします。

近年、「ロコモティブシンドローム」という概念が提唱されており、これは加齢に伴う運動器の低下により、「要介護」「寝たきり」のリスクが高い状態を指します。運動器のリハビリテーションは、高齢者の方に「ロコモティブシンドローム」を知って頂き、治療を通じて健康寿命の延伸、介護予防に繋げるという目的においても大変意味のある治療です。

当院では主に、筋力・柔軟性(関節可動性)・バランス能力を向上させる「運動療法」と、症状を軽減させる物理療法を行っており、患者様の状態に応じて2つの治療を組み合わせながら適切なリハビリテーションを行います。患部にかかる負荷を和らげつつ、代謝・血行の改善によって再発予防にも繋げていきます。
まずは、診察にて骨(軟骨)、関節、筋肉、靭帯、腱などの状態についてお伺いし、その内容を基に治療計画を立て、経過を確認しながら適切な治療を実施します。
また、日頃の生活で注意頂く点やセルフケアについても丁寧に指導しますので、小さなことでも分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

痛みの時期に応じたリハビリテーション

リハビリテーション治療の目的や内容は、症状の内容や重症度などによって大きく変わります。

急性期

発症後、3週間程度は薬物療法を主に実施し、患部の状態の改善や痛みを和らげます。場合によっては患部を安静に維持できるように固定することもあります。痛みの軽減には物理療法も有効です。また、筋力低下・関節拘縮を予防するために、運動療法や物理療法を行うこともあります。

回復期

痛みなどの症状が緩和する回復期では、根本的な原因を解消するためにリハビリテーションを実施します。運動療法で筋力・柔軟性を高めて患部にかかる負荷を和らげ、物理療法でその効果をより高めていきます。その他、日頃の姿勢や動作などで注意が必要な点についても丁寧に指導します。

リハビリテーションが必要な症状

リハビリ対象となる症状や疾患は、骨折などの外傷以外にも様々なものがあります。

  • 首や肩のこり・痛み、腰痛などにより、日常生活に影響が出ている
  • 歩きづらい、早く歩けない、休みながらしか歩けない
  • 日常的な動作(着替え・食事・トイレなど)がうまくできないことがある
  • 関節の可動域が狭くなった、痛みや変形が起きている
  • スポーツが原因の故障・障害(動かしにくさや慢性的な痛みなど)
  • 交通事故が原因のむち打ち症(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)など
  • 筋力低下や痺れ、こわばり、麻痺などによって動きにくい
  • 手術後に痛みなどの症状が続いている

肩こりや腰痛は体質、関節リウマチや骨粗鬆症は加齢が原因だからと放置している方もいらっしゃいますが、運動療法や物理療法を併用した適切なリハビリテーションを受ければ、機能が回復する可能性があります。また、筋肉は何歳になっても鍛えられます。リハビリテーションは、加齢による歩行機能の低下の改善・予防にも効果的で、生活の質(QOL)を高める効果も期待できます。

当院のリハビリテーションの内容

当院では、運動療法、物理療法、徒手療法、装具療法といった理学療法を、患者様の状態に応じて組み合わせることにより、症状の軽減や運動機能の向上を目指します。

運動療法

力を入れづらい、関節を上手く動かせない、身体の一部が痛む、転びやすくなったなどの症状を改善する目的で実施する訓練です。

筋力増強訓練
(筋力トレーニング)

膝伸ばし、かかと上げ、スクワットなどの運動メニューをこなすことで筋肉を鍛え、患部にかかっている負荷を和らげます。トレーニングメニューは、患者様の状態や症状に合わせて無理なくできるものをご提案します。

歩行訓練

歩行訓練は、歩行器・ステッキ・松葉杖を用いた訓練、平行棒を用いた前後左右に動く訓練、階段や出っ張りを用いた訓練などがあり、患者様の状態に応じた適切なメニューを実施します。

関節可動域訓練

関節可動域訓練とは、関節の可動域が狭くなって動かしにくさを感じている方に向け、可動域を広げる目的で行う訓練になります。多少の痛みを感じるくらいまで動かしますが、動きをコントロールしていますので動きをやめれば痛みが残ることはほとんどありません。

バランス能力の訓練

バランスが良い状態とは、身体の平衡感覚が一定に保たれて安定している状態です。
バランスは、静的バランスと動的バランスの2種類に分けられます。
静的バランスとは、静止している時に身体に外から力が加わっても動かずに平衡を保てている状態のことで、一方、動的バランスとは、身体を動かしている時に身体に外から力が加わっても姿勢を保とうとする状態を指します。
高齢者の方は、両者のバランス機能が低下する傾向にあり、転倒しやすくなります。バランス能力は様々な要因が影響するため、バランス能力を正しく見極め、多次元的なアプローチを試みます。具体的には、バランスを崩しやすくなる状態、崩す方向、頻度を確認し、その原因は何なのか、どうしたら転倒を予防できるのか(杖や歩行者などの介助支持物を用いるなど)を検討します。その上で、短期・長期の2つの観点からアプローチしていきます。
体幹トレーニングの1つとして当院にございますパワープレートが非常に有効です。

パワープレートについて

パワープレートは、1秒間に25~50回の高速振動で、あらゆる方向から全身の細部に負荷をかけ、短時間で効率的なエクササイズをすることが可能です。この振動は筋肉に微小な引張力を与え、筋肉が自動的に収縮することで運動効果を高めます。プレートの上で1回30秒を1セットにエクササイズしますが、負荷量は個々の患者様に併せて調整致します。アスリートからご高齢の患者様まで目的に合わせてトレーニングが出来ます。筋力の向上、柔軟性の改善、骨密度の上昇、血流の増加、セルライトの減少などの報告があり、当院では理学療法士指導のもとリハビリテーションの一環として行なっております。

物理療法

物理療法は、超音波の照射など物理的な刺激を患部に与えることで、血流・機能の改善が期待できます。
また、運動療法を加えた併用療法を行うことでより効果を得やすくなります。

低周波・干渉波治療

2つ以上の電極を皮膚に装着し、異なる周波数の交流電流を流します。これにより体内で2つの電流が交差し、周波数の違いにより干渉波が生成されます。この干渉波が、体内の深部まで効果的に到達し、局所的な刺激を与えます。血流改善や筋肉の緊張の緩和、患部周囲の組織代謝が促進され慢性的な痛みやコリを解消します。また、当院で採用している治療器は多彩なモードを有しており、肉離れや急性腰痛症、寝違えなど急性期の痛みにも効果的です。

KT-108

ES-5000

禁忌
  • ペースメーカー使用者、不整脈など心疾患のある方
  • 悪性腫瘍のある方
  • 妊娠中またはその可能性のある方
  • 皮膚が脆弱な方
  • その他、医師が不適当と判断した場合

牽引療法

当院では、1台で腰椎牽引も頸椎牽引も行える2wayタイプの自動間欠牽引装置を採用しております。体を引っ張ることで骨格や筋肉にかかる圧力を調整し、神経の圧迫を減少させ、痛みの緩和や機能回復を行います。また、筋肉や関節の周囲の血流改善・可動域改善・姿勢矯正効果などもございます。

禁忌
  • 炎症性脊椎疾患のある方
  • 感染性脊椎疾患のある方
  • 悪性腫瘍のある方
  • 関節リウマチ
  • 妊娠中またはその可能性のある方
  • その他、医師が不適当と判断した場合

ウォーターベッド型
マッサージ器
(アクアタイザー QZ-280)

水を用いたマッサージベッドで、水圧と温熱を利用して身体をマッサージし、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進する効果があります。また、リラクゼーション目的だけでなく、腰痛や肩こり、筋肉痛の緩和などの治療目的でも使用します。ベッドに横たわっているだけでよく、痛みや不快感なく安心・快適に治療を受けられます。

超音波(エコー)骨折治療器

LIPUS(Low Intensity Pulsed Ultra Sound:低出力パルス超音波)の音圧効果を用いて、骨折部位の骨癒合を促します。自然な骨癒合にかかる期間よりも約40%短くなります。治療は、超音波を照射するだけの簡単なもので、痛みが生じることはなく、所要時間は20分ほどです。この治療を週に3回以上実施します。

装具療法

装具療法では、患者様の状態・症状に応じて適切な装具を利用して治療します。例えば、コルセットやサポーター、インソール(中敷き)などがあり、テーピングなども装具に該当します。