拡散型圧力波について
体外衝撃波治療とは、衝撃波を患部に加えて痛みを緩和する治療法です。この治療法は2種類に分けられ、1つは集束型衝撃波(FSW:Focused shock wave)装置を用いた方法、もう1つは拡散型圧力波(RPW:Radial pressure wave)装置を用いた方法があります。
膝や腰の筋や腱、軟部組織の異常によって起きた肩や肘、腰、膝、足などの痛みを緩和させます。拡散型体外衝撃波(RPW)装置は、従来型の集束型体外衝撃波(FSW)よりも衝撃波の出力が低くなっているため、理学療法士の指導のもと行うリハビリテーションで使用できるようになりました。そのため、リハビリテーションでより高い効果を得られることが期待できます。
拡散型体外衝撃波(RPW)は、以前はアスリートの低侵襲治療として活用されていましたが、最近では医療機関に通う整形外科患者様に対しても用いられています。
今までの体外衝撃波治療とは
どういう違いがある?
違い①
体外衝撃波治療器(体外衝撃波疼痛治療装置)は患部となるターゲットの大きさが卵1個分程度の局所集中型で、尿管結石の体内破砕などに使用されます。
違い②
拡散型圧力波治療器であるショックマスターは、焦点が無く、拡散するため、ターゲットが広範囲に及び、筋・腱の治療に適しています。
従来型の集束型衝撃波は、衝撃波の出力が極めて高く、骨にまで影響を与えるので、偽関節や難治性骨折などには効果的な治療でしたが、実施にあたっては医師が管理する必要がありました。一方、拡散型体外衝撃波の出力は集束型衝撃波の10%程度であり、骨に影響が及ぶことはなく、理学療法士の指導のもと行うリハビリテーションで使用できるようになりました。
集束型衝撃波は、エネルギーを収束させるので効果が及ぶ範囲が狭く、患部にピンポイントで照射しなければなりませんでしたが、拡散型体外衝撃波はエネルギーを拡散させる特徴があるので効果が及ぶ範囲が広く、照射を実施しやすい利点があります。
また、適応疾患にも違いがあり、集束型衝撃波は骨、腱の疾患で、拡散型体外衝撃波は筋、腱の疾患が適応となります。この理由は照射強度・範囲の差にあり、集束型衝撃波は50mmと皮膚深層まで治療でき、拡散型体外衝撃波は20mmと皮膚表層の治療に適しています。集束型衝撃波は焦点距離をコントロールすることで特定の部位にエネルギーを集中させられる特徴があり、拡散型体外衝撃波は、表面が最もエネルギーが高くなり、深部になるほど拡散して効果が低下していきます。
拡散型体外衝撃波、照射装置に付属のトランスミッターを取り換えられ、それにより、疼痛軽減以外にも、筋のリラクゼーションや拘縮治療など、様々な症状に対応できるようになります。
特に、拘縮(関節が伸縮性を失って固くなり、動かしにくい状態)治療は、集束型衝撃波では治療効果があまり期待できなかったため、拡散型体外衝撃波が効果的な治療として行われるようになっています。
対象となる疾患
- 足底腱膜炎(足底筋膜炎)
- 五十肩(肩関節周囲炎)
- テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
- ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
- ばね指(手指腱鞘炎)
- 変形性膝関節症(局所痛)
- アキレス腱炎(アキレス腱症)
- 膝蓋腱炎
- 石灰沈着性腱板炎
- シンスプリント
- オスグッド病
- 腰痛
など
変形性膝関節症などで起こる変形を改善させることはできませんが、筋・腱などの局所で起きている痛みを緩和させることは可能です。
治療の特徴
圧力波によるポイント刺激
ビームアプリケータ(15mm)によるポイント圧力波で集中的に治療します。
- 疼痛緩和
圧力波 × 振動による周辺刺激
Dアクターによる圧力波と同時に振動を加えて、患部周辺をほぐす治療を行います。
- 筋緊張緩和
- 血液循環の改善
- トリガーポイントの治療
振動による全体刺激
Vアクターによる振動で全体をならします。
- 代謝活性の刺激
- リラクゼーション
- 微小循環の改善
全身の筋・腱の治療に有効
首から足底まで、ショックマスターの治療部位は全身の筋・腱の治療に有効です。ショックマスターによる圧力波治療法は外科的手術が必要とされた患者様へのもう一つの新しい選択肢となっています。
圧力波の原理
コンプレッサーにより発生させた圧縮空気をパルス状に開放させ、ピストンがアプリケータにぶつかることで圧力波を生み出しています。
治療プロトコルを搭載
治療部位に対しての具体的なショット数、出力強度、周波数などを画面を見ながら使用できます。
- 治療は1回あたり約10分と短いので、他のリハビリに影響しにくいです。
- 治療間隔は週に1~2回です。
- 治療後すぐに痛みが緩和します。
- 痛みの緩和のみならず、関節拘縮の改善も期待できます。
- 筋・腱に関する症状・疾患に対応できます。
- 拡散型体外衝撃波と運動療法を併用することで治療効果が高まります。
- 副作用のリスクが少ないです。
- 集束型衝撃波と同じく治療に麻酔は必要ありません。
治療の副作用
副作用が起こることは滅多にありませんが、起こり得る副作用の例としては、照射痛や照射後の疼痛(筋肉痛・鈍痛)、腫れ、赤み、皮下出血などが挙げられます。
治療にかかる費用
拡散型体外衝撃波はリハビリテーション内で行われるので、費用もリハビリテーション費用に含まれます。
治療効果
拡散型体外衝撃波は疼痛を取り除く治療として高い効果が期待できます。
また、疼痛軽減以外にも拘縮治療にも効果的なので、肘・膝を曲げ伸ばしできないなどの症状の改善が見込めます。
また、術後に組織が癒着したことによる可動域制限にも有効なので、継続して治療を受ければ徐々に動かしやすくなっていきます。
治療の流れ
STEP1
まずは診察を実施し、リハビリテーションを開始していきます。
STEP2
問診や診察の内容を基に症状を評価し、痛みが起きている部位を触診や動作によって確認します。
STEP3
衝撃波の出力は、最初は低く設定し、痛みに耐えられるレベルまで様子を確認しながら少しずつ出力を高めていきます。
STEP4
まずは痛みを取り除くのに適したトランスミッターで患部に衝撃波を照射し、その後、トランスミッターを変更して患部に関係する筋のリラクゼーションを実施します。
STEP5
拘縮改善を目指す場合は上記とともに、癒着改善に適したトランスミッターに変更して治療を実施します。
STEP6
治療が複数回に及ぶ場合は治療間隔を空ける必要があり、目安としては週に1~2回です。
拡散型体外衝撃波の場合、1回では痛みを完全に取り除くことが難しいこともあり、通常は治療を複数回行う必要があります。詳しくは医師にご相談ください。