手や手首の痛みについて
手や手首は日常生活でよく使う部位で、疲れが溜まりやすい特徴があります。例えば、長時間のデスク作業や手芸など指先を使用する作業は、手の痺れや筋肉のこわばりを引き起こすこともあります。
また、加齢に伴って手や手首の筋肉は低下するため、変形などの異常が起こりやすくなります。手は身体の部位の中で最もよく使う部位なので、異常を感じた場合はすぐに対処しましょう。リハビリテーションをしっかり行うことで、症状改善が期待できます。
手の骨の仕組み
手首から指先にかけて多数の関節が存在しており、筋肉や靭帯、腱、神経などと組み合わさって複雑な構成になっています。
指は、腱という筋肉と骨を繋ぐ組織によって曲げ伸ばしが可能となっています。その周囲は腱鞘という組織によって保護されており、腱がスムーズに動くよう滑車のような役割を担っています。腱鞘に摩擦などの異常が起きたりした場合、腱鞘炎などが起こることがあります。
異常が起こる主な原因
外傷
突き指、指や手首の骨折、靭帯筋腱損傷などの損傷によって異常を感じます。
腱鞘炎
指や手首に長時間負担がかかっていると、指を動かす腱やそれを包む腱鞘に炎症が起こることがあります。
骨の変形
怪我や骨折をした後、骨がうまく治らずに変形することがあります。また、加齢に伴って骨の変形が進むため、痛みや運動障害などのトラブルが起こりやすくなります。
主な症状
- 指や手首を動かすと痛い
- 指を動かす際に引っ掛かるような感覚がある
- 手や手首に腫れが生じる
- 指や手・手首が痺れる
など
主な疾患
橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)
橈骨とは前腕の親指側にある骨のことで、この骨が手首に近いところで折れる骨折を橈骨遠位端骨折と言います。小学生などの小児や高齢者、骨粗鬆症が進んだ方によくみられ、転倒時などに手を地面に強くつくことで起こります。骨折した部分がうまく治らずに変形した状態になると、日常生活に大きな支障が出ることがあります。大きくズレている場合は手術を検討することもあります。一方、ズレがそこまで無い場合は徒手的に整復後、シーネやギプスを用いて患部を固定し、約4週間は安静にして頂きます。当院では、骨折をできる限り早く治せるように、治療の早い段階から骨折超音波治療器を使用しています。怪我や手術後は手首の可動域が狭まるため、個別にリハビリも必要です。当院では、理学療法士が各患者様に応じたリハビリプログラムを計画し、適切なケアを提供しています。
舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)
手首は小さな骨がいくつもあり、舟状骨もその1つです。この骨が骨折しても痛みや腫れは比較的小さく、軽い捻挫だと誤解して放置されてしまうことがあります。手を地面に強くついてから痛みが続いており、異変を感じてレントゲンやMRI、CTなどを受けてようやく骨折していたことが判明するケースもよくあります。
骨折をそのままの状態にしておくと偽関節という状態に進行し、痛みが強く現れることがあります。また、変形性関節症となって手首が変形する恐れもあります。変形が悪化すると手首が動かしにくい、力をいれづらいなどの状態になることもあるので、早めに検査・治療を受けましょう。
マレット指
突き指などで指の第一関節が伸ばせなくなる状態です。指の腱は屈筋腱と伸筋腱の2種類に分けられ、この2つが動作することで曲げ伸ばしが可能となっています。
突き指をしてしまうと、第一関節を伸ばす伸筋腱が切れたり(腱性マレット)、骨と腱の接合部が骨折(骨性マレット)したりすることがあります。
どちらの場合も指を伸ばす機能を損なうため、装具による治療を行う必要があります。特に、骨性マレットは剥離した骨片のサイズ次第では手術を検討する必要があります。
ばね指(弾発指)
ばね指は腱鞘炎の一種で、指を曲げ伸ばしする際に、引っ掛かりや痛みが現れる疾患です。引っかかった後にバネが弾けるようにピンと伸びることから呼ばれるようになりました。
初期では安静など保存療法で改善が見込めるものの、悪化した場合は指をしっかりと伸ばせなくなる恐れがあります。指を酷使することが原因となり、長時間デスク作業や編み物、ピアノなどをしたり、物を強く握る動作を行ったりすると起こりやすいので、注意しましょう。
手指の酷使以外にも妊娠や産後・中高年の女性などのホルモンバランスの変化や糖尿病患者に起こりやすく、再発もしやすいので適切な治療が必要です。重症の場合は手術を検討することもあります。当院では、手術が必要となる状態まで悪化しないように、リハビリテーションを施行したり、エコー下でピンポイントに患部に注射を行なう事もできます。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
手根管とは、手のひらの付け根部にある小さな管で、指を曲げるための腱や正中神経が通っています。
手根管症候群は、腱に起こった炎症や横手根靱帯の肥厚により手根管内で正中神経が圧迫され、親指や人差し指、中指に痺れなどの症状が起こる疾患です。悪化した場合、親指の筋肉が萎縮し、動きが悪くなることがあります。この疾患は、手作業を行う仕事をしている方だけでなく、透析治療中の方、妊娠中・更年期の女性などに起こりやすいです。
安静にして頂くことが大事で、必要であれば消炎鎮痛剤の使用、エコーを用いたハイドロリリースやステロイド注射を実施します。症状が重度の場合は手術を検討することがあります。
ドケルバン病
ドケルバン病は手首の親指側の腱鞘に起こる炎症で、腫れや痛み、違和感や引っかかりが生じます。指や手首を酷使することが原因で、手作業を行う仕事をしている方、赤ちゃんの頭を手首で支えて授乳する女性に起こりやすいです。当院では、外用剤、運動療法、物理療法、エコーを用いた注射などを組み合わせ、できる限り早く改善するように努めています。
母指変形性CM関節症
母指CM関節は親指(母指)付け根の関節で、この関節により物を掴む・蓋を開けるなどの動作が可能となります。母指変形性CM関節症は、この関節を酷使することなどで変形が起こる疾患で、親指を動かす動作をした際に強い痛みが現れます。
親指は掴む・握るなどの動作で4本の指を補完する働きをしているため、負担がかかりやすい部分です。CM関節の軟骨は摩耗しやすく、骨同士が接触したり靭帯が緩んだりすることで関節がズレやすくなります。
まずは安静にすることが重要で、サポーターを用いて親指を固定したり、注射を行ったりします。なお、変形が大きい、痛みが強い場合は手術を検討することがあります。
ヘバーデン結節・ブシャール結節
変形関節症の一種で、第一関節(DIP関節)で変形が起きた場合はヘバーデン結節、第二関節(PIP関節)で変形が起きた場合はブシャール結節となります。原因ははっきりしていませんが、ホルモンバランスの変化や加齢、関節の酷使などが関係しているのではないかと言われています。関節部の軟骨が摩耗し、変形や屈折、腫れなどが生じます。
中年期の女性に起こりやすく、痛みだけでなく見た目にも影響するため受診される方が多いです。状態を見て物理療法や装具療法などの中から適切な治療を実施します、
関節リウマチ
関節リウマチは、身体を守る免疫系が誤って全身の関節組織を攻撃し、炎症が起こる疾患です。主な症状は手足の関節に起こる慢性的な腫れや痛みで、特に朝は関節の可動域の制限、こわばりを感じます。好発年齢は30~50代で、比較的女性によくみられます。
治療せずにいると、関節の軟骨・骨が破壊されていき、指の関節部が変形します。さらに進行すると、日常生活に大きな影響が出る恐れがあります。リウマチの可能性がある場合、両手のレントゲンや血液検査を実施します。血液検査では、炎症の状態やリウマチに特有の物質が出ていないか、「CRP」「抗CCP抗体」「リウマチ因子」などの項目を確認します。
ガングリオン
腱鞘や関節包にゼリー状の物質が含まれる腫瘤ができる疾患です。原因は明確になっていませんが、女性に起こりやすい傾向があります。診察所見ならびにエコーなどの検査にて診断いたします。
ガングリオンは基本的に良性の腫瘤のため、通常は経過観察での対応となりますが、肥大化したり、痛みが強い、神経を圧迫するようであれば、穿刺吸引や手術を行うことがあります。
診断のために行う各種検査
レントゲン
X線を照射して骨の変形・骨折が起きていないか、起きている場合はどの程度なのか、その他、腫瘍やリウマチ性の変化などについて確認します。
超音波(エコー)検査
レントゲンでは捉えきれない靭帯や腱などの軟部組織の損傷や炎症の有無、腫瘍の有無やその性状、不安定性などをリアルタイムで確認できます。また、レントゲンでは捉えられない程度の微細な骨折も確認できます。
治療
安静
変性疾患によって起きている炎症や痛みを抑えるためには、手や手首に負担がかからないように当面の間は安静にして頂く必要があります。状態次第では、テーピングやサポーターを用いることもあります。また、骨折している場合は、骨を元の状態に戻した後に固定処置が必要です。
薬物療法
基本的には貼り薬や痛み止めを使用しますが、状態によってはステロイド注射を実施し、痛みを抑えます。
物理療法
干渉波・低周波治療器など、様々な機器を使い分けて患部に起きている炎症を抑え、痛みの軽減や可動域の改善を目指します。
KT-108
ES-5000
運動療法、
正しい動作指導
日頃の動作によって痛みや変形が起きている場合、再発させないために動作の改善も必要です。当院では、理学療法士が、生活習慣の改善も含め、負担がかからないような動かし方の指導を行います。
手に異常を感じた場合、
早めに当院まで
ご相談ください
手は日頃様々なシーンで使用する重要な部位なので、異常が起きていれば早めに対処する必要があります。少しでも違和感を覚えた場合、整形外科で検査を受けましょう。治療では、まずは安静にして頂くことが大切ですが、機能を回復するための治療やリハビリテーションも大切です。重症になっている場合は手術を検討することもあるので、そうならないためにも早めに当院までご相談ください。