膝痛について
痛みの種類は様々で、歩行時に痛む、就寝時に痛む、階段の昇降時に痛む、膝の内側・裏側が痛むなど、患者様によって訴える痛みは異なります。また、原因も様々なものが考えられます。
整形外科領域で膝関節痛の主な原因としては、外傷性疾患、代謝性疾患、リウマチ性疾患、腫瘍性疾患、変性疾患などがあります。症状の重症度や原因疾患次第では、歩行困難や寝たきりなど要介護状態に至る恐れもあります。原因を特定するためには、専門医による問診や診察、検査が必要です。また、レントゲン検査で異常が見つからなかったとしても、診察や超音波(エコー)検査で異常が見つかることもあるので、膝に痛みを感じる方は当院まで早めにご相談ください。膝痛の治療では原因に応じた適切な治療が求められます。
膝痛を引き起こす主な疾患
変形性膝関節症
膝関節痛の主な原因として、変形性膝関節症が挙げられます。怪我や加齢に伴って軟骨がすり減ることで、膝関節に変形が生じる疾患です。比較的女性によくみられ、加齢に伴って発症リスクが高くなります。
初期は、立つ・歩く動作の際に痛みが一時的に現れますが、休んでいると痛みは軽減していきます。しかし、変形が進むと正座や階段の昇降が困難になり、いずれは膝を伸ばすことができなくなります。
日本国内では、2,500万人程度の羅患者がいると考えられており、多くの方は自覚症状がありません。このように発症しても必ず症状が現れるということはないですが、変形が進行するに伴って痛みが増悪していくことが多いです。
膝痛が生じた場合、リハビリテーションはもちろんですが、膝関節内のヒアルロン酸注射や再生医療など様々な治療法がある為、患者様の症状・病態や希望に合わせて選択します。
早めに専門医に相談して治療や予防を行うことが大切です。
関節リウマチ
関節リウマチは自己免疫疾患の1つで、自身の免疫が関節にダメージを与えて関節内で炎症が生じ、手足の関節に腫れや変形などの症状が起こる疾患です。全身の関節に影響が及ぶため、初期は全身のだるさ、微熱、食欲不振などの症状が現れ、特に朝は関節周囲のこわばりを感じます。
悪化した場合、手足の指などに腫れ、肩、肘、手首、股関節、膝、足首など様々な部位に痛みが及びます。そこからさらに悪化した場合、膝関節腔内に水分が溜まり動きづらさを感じたり、軟骨・骨が破壊されて可動域が狭くなったりなど、生活に大きな支障が生じます。
現在のところ、原因は明確になっていません。年齢問わず発症リスクはありますが、好発年齢は30〜40代で比較的女性によくみられます。全身のだるさ、微熱、食欲不振などの症状が続いており、手足の指の関節に腫れがみられる場合、早めに当院までご相談ください。
半月板損傷
半月板損傷とは、膝関節の内側・外側にある緩衝材の役目を担う半月板(軟骨)が損傷した状態で、様々な症状を招きます。膝関節は、他の関節部とは異なり、筋肉によって骨同士が繋がっておらず、軟骨や靭帯、腱によって安定化しており、半月板は重要な働きをしています。怪我による外傷性の損傷と加齢による変性断裂(損傷)があります。
半月板が損傷すると、膝を曲げ伸ばしする際に引っ掛かる感じや痛みが生じ、他にもコキッと音が鳴る、膝の曲げ伸ばしが困難になるなどの症状が起こります。
治療は、可動域や痛みの改善を目的として物理療法や運動療法、ヒアルロン酸注射などを行いますが、状態次第では手術を検討することもあります。
オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病は、小学生から中学生の成長期のお子様によくみられるスポーツ障害で、膝のお皿の下の隆起した部分(脛骨粗面)に負荷がかかることで発症します。太ももの前の大腿四頭筋が膝蓋骨(お皿の骨)を介してつながる骨の付着部の骨端軟骨の剥離です。この時期は急に骨が軟骨から成長する時期で、膝を伸ばす力の繰り返しによりこの成長軟骨部が剥離するために生じます。
成長期の一過性の病気で痛みが比較的長期間生じますが、痛みを我慢してプレーするお子様が多いです。筋力不足、柔軟性、膝関節以外の関節の硬さなどが発症に関係するため、リハビリテーションによって改善し、痛みの軽減・再発予防に努めます。
膝痛は根治が難しい?
当院で患者様にお話をお伺いすると、「マッサージによって一時的に痛みが治まるが、翌日にまた痛みが起こる」「整形外科で電気治療や薬を処方してもらったが意味がなかった」と仰る方が多いです。原因疾患の特定ができず、対処療法的な治療で終わるケースもよくあります。
多くの医療機関では膝痛は膝関節の疾患と考えて治療を行っていますが、必ずしもそうとは限りません。
各患者様によって原因は異なるので、ある患者様には効果があった治療法でも、別の患者様には効果を示さないケースもあります。しかし、個別に対応するのは多くの時間が必要となり、保険制度では対応しきれない面もあるため、多くの医療機関では個別最適な対応が実現できていません。
膝痛は根治が難しいということはなく、近年では再生医療も登場しています。正確な診断により原因を突き止め、各患者様に合わせた適切な治療法を施すことで、短期間で症状の改善が期待できます。
膝痛は膝以外にも
原因が考えられます
膝痛は、膝関節だけに問題があるとは限らず、足首や骨盤、腰など全身のバランス・姿勢も関わっています。立つ・歩くなどの動作時に頭部を支えるために様々な部位に負担がかかっており、バランスが崩れることで、膝に影響が加わり痛みや痺れが現れます。
膝痛は、膝周囲の筋肉が収縮・緊張状態になり、血行不良となって生じることが多いです。そのため、筋肉の緊張をほぐすことが重要となります。
当院では、膝のみならず、腰、股関節、足部などを丁寧に診察し、患者様の姿勢・歩行時のバランスもチェックします。それにより、痛みが膝単体によるものなのか、もしくは他の関節や筋肉の柔軟性・機能不全による副次的なものなのかを正しく見極めます。
検査結果を患者様に丁寧にご説明し、治療方針を一緒に考えていきます。治療方針をご了承頂ければ、それに基づいて治療を進めてまいります。初診の方は診察時間を十分に確保するようにしていますので、分からない点などあれば、お気軽にご質問ください。
膝痛の診断・検査
当院では、最初に問診・触診を実施します。その後、必要に応じて詳しい検査を行います。
例えば、膝痛の原因となる初期の変形性膝関節症や半月板損傷は、レントゲンでは捉えきれないケースがあります。そのため、これらの疾患の可能性がある場合、超音波(エコー)検査を実施します。また、原因は膝関節だけに限らないので、腰、股関節、足部などの状態、姿勢など全身の診察も実施します。
筋緊張や炎症によって痛みが現れている場合、運動療法や物理療法などの治療法も行っています。このように、各患者様の状態に応じて適切な治療法を提供できるように努めています。
膝痛の治療法
膝痛は症状や原因が多岐にわたり、治療期間も状態によって異なります。そのため、各患者様に合わせた個別のアプローチが求められます。当院では、各患者様の状態・原因に応じて、投薬、ハイドロリリース、関節内注射、理学療法、物理療法、再生医療などの治療法のなかから、最適なものを組み合わせて治療を行います。
また、必要に応じて他科との連携も行っています。重症例など、高度な治療が必要な場合、連携している高度医療機関をご案内します。治療後のアフターケアについては当院のほうで注意を払いながら対応させて頂きます。
膝痛は、最初は軽い症状でも、悪化すると日常生活に大きな支障が生じるため、痛みが続いている場合は、早めに当院までご相談ください。